幼児と自然

 子どもにとっての自然の意義を考えよう ~心身の成長~命の教育~環境教育~

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 自然に親しむ保育による育つ力の実証研究

幼児の姿の分析から

    出原 大(関西学院聖和幼稚園)    田尻 由美子(精華女子短期大学)
    石坂孝喜(大塚保育園)        無藤 隆(白梅学園大学)

 

1.はじめに
  幼少期から自然に親しみ、動植物と触れて遊ぶ体験は、知的好奇心を育て科学的思考力を培うために重要であるが、自然が好きで大切に思う環境保全の意識、あるいは命あるものに触れてその大切さに気づくなどの心の教育にとっても必要不可欠であると考えられている。今回は、園の自然環境あるいは園の周辺の動植物や自然環境を有効に活用した保育の実践により、豊かな自然体験が可能となり、結果として幼児期に育てたい力がよりよく育つことを、事例から読み取って整理したうえで「自然保育の意義」を示す。

2.方法
  自然とかかわってより良く育つであろうと考えられる「知的好奇心と探求心」「自然とかかわる意欲・態度」「五感を十分使ってかかわる」「命を大切にする」「遊びを創造する」などの力に焦点を当て、自然とかかわる幼児の姿を記録し、整理分析した。


3.結果及び考察

今回は、聖和幼稚園の実践事例より、「五感を十分使ってかかわる」(事例1)、「知的好奇心と探求心」(事例2)、また、大塚保育園の実践事例より、「命を大切にする」「生きる力や人間関係力」(事例3)などの育ちが見られ、光の園保育園の事例より(事例4)、「生き物の生態学的な特徴への気づき」などが観察された。

ヒイラギナンテン.jpg
















<事例1>ヒイラギナンテンの色水遊び:
歳の女児と3歳の女児人の計人がデッキに置いてあったヒイラギナンテンの枝から実をとり、つぶして色水遊びを始めた。枝がなくなったころ今度は歳の男児名が園庭のヒイラギナンテンの木から実を集めて、ジュースに見立てたりして遊んだ。植物とのかかわりから、五感(触覚や嗅覚)を刺激する体験が得られた。さらに想像力や探究心を働かせたり、自分の考えを言葉で表現したり仲間同士でコミュニケーションをとるなどの場面がみられた。この活動の間、保育者が幼児の気持ちを受け止め共感し、枝の場所を教たりすることで遊びが継続し発展した。



<事例2>ボダイジュの幹の穴をめぐって:
ボダイジュの幹の穴の発見から、その中には何があるのかを知りたいという探索活動に広がり、いくつかの手段を自ら考え工夫しながら日間にもわたって継続して探索した。この一連の探究体験は歳児名と歳児1名が共有することで楽しみが増加し、保育者が好奇心をこわさない程度に助言し見守ることでより深まった。興味・関心を持つという好奇心から推測し深く追求するという知的活動に深まり、このような探究心から考える力や想像する力、工夫する力へとつながった

シナノキの幹よりカミキリムシの幼虫を探して.jpgシナノキ幹の穴.jpg








<事例3>
野鳥の観察と巣箱作り:

 園近くの大塚西公園サンクチュアリや大栗川での野鳥観察によって鳥への関心が高まったが、子ども達は観察するだけではなく「カモに石を投げる」というような行動をとった。「どうなるのかな?」「脅かして飛ぶ姿を見たい」というような単なる好奇心の表れなのかもしれないが、子どもが生きものに接する体験では、幼いほど直接的になるが、命あるものへの接し方を知らせるきっかけになった。









  後日、園では巣箱作りに取り組んだ。導入としてインコと野鳥との違いなどを話したり、絵本を読みきかせたりし、巣箱の小さな入口(小丸)の意味を伝え関心を高めた。当初子ども一人では巣箱の作成は難しいのではないかと思っていたが3人グループで協力し、保育者がパーツの切り出しを手伝ったり地域の大工さんが手を貸してくれたりしたことによって、ノコギリや金槌などの道具を使い無事作り上げることができた。自然にかかわりながら、手先を使い道具を使うなど生きる力となる豊かな生活体験ができた。また、協働的作業を行って一つのことを達成するという人間関係の形成力にもつながる体験となった。
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<事例4>カメ
の観察(冬眠からの目覚め):
  園には30年近くも前から飼われているカメがいる。日頃からいつでも観察できるようにしてあり、初冬には「冬眠」する様子も観察していた。今回はあたたかくなったので冬眠から覚めたことを保育者が伝え、園庭に出て、3歳児クラス全員で観察した。動くカメに、甲羅を触ったり、口々に「起きとう~」「かわいい」「すげぇこっちに来よう」などと言ったり、興味津々であった。枝でつつく女児に他の女児が「かわいそう、優しくタッチしないとダメ」とたしなめたり、ケースを叩く男児にも「びっくりするからダメ」と注意する女児がいて、生きものへの接し方(扱い方)を子ども自ら伝える様子が見られた。さらに足やしっぽを触って確かめたり、「爪は長いんだ」と気付いたりし、カメの体の様子や冬眠をするという生活の仕方など、生態学的な特徴について様々な気づきが得られた。










4.まとめ

自然(植物・動物)以外の人工的な環境とのかかわりでは、このような多様で深まりのある体験は得られないのではないかと思われる。つまり自然とかかわる体験は、成長発達の上で必要な体験として非常に質の高い体験となり得る。エネルギー不足が心配され温暖化対策も急がれる現代、また、バーチャルな世界の台頭で子どもたちの心の育ちや健康に不安がある現代にあって、今一度子どもにとっての自然の意義を問い直す必要があるのではないかと思われる。


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